''『豆腐の吸い物 甘鯛の味噌漬けなど』''
『豆腐の吸い物 甘鯛の味噌漬けなど』
佐々木三冬(十九歳)が、実母「おひろ」の実家、下谷五条天神門前にある書物問屋
〔和泉屋吉右衛門〕宅で食べた夕餉のいくつか。
和泉屋吉右衛門は、三冬の母の実兄で、三冬にとっては、伯父にあたる。
「甘鯛の味噌漬け」というのは、この当時、一般庶民の口にも入る料理だったの
だろうか。
それとも、裕福な商家だから出てくる料理なのだろうか。
はこばれて来た膳に向い、豆腐の吸い物や甘鯛の味噌漬けなどを、ぱくぱくと口へはこんでいる三冬をながめ、和泉屋吉右衛門と妻のお栄はあきれ顔を見合せ、ためいきをもらすのみであった。 (P47)
このあと、三冬は根岸の寮に戻っていくのだが、寮の近くで四人の賊に襲われ
両腕を折られそうになるところを、小兵衛に助けられ、「女武芸者」のドラマ
は進んでいく。